多くの人が実はトレーニングによってスポーツ障害に苦しんでいると聞くと驚かれると思います。
スポーツ障害を起こさないために、私が日本に紹介したマフェトン理論の根幹を成すエアロビック(有酸素系)トレーニングについて、押さえておきましょう。
人間が運動するときにはエネルギーを必要とします。
通常このエネルギーはほとんどを脂肪または糖質(血糖)を燃やして得ています。
その中でも、エネルギーの多くを脂肪から得ている状態をエアロビック、糖質から得ている状態をアネロビックと呼びます。
比較的運動強度の低いエアロビックの状態では、体内にたくさん蓄積されているエネルギー効率の良い脂肪が燃えるため、長時間の運動が可能になります。
一方、運動強度の高いアネロビックの状態では、体内蓄積量の少ない糖質が主なエネルギー源となるため、瞬発的な力は発揮できますが、短時間しか運度は持続しません。
ですから、持久系のアスリートにとって、最初は運動強度の低いエアロビックトレーニングによって、脂肪をエネルギーにして動くエアロビックシステムを鍛え、エアロビックシステムを築き上げると腰痛や膝の痛みのようなスポーツ障害と無縁になっていくのです。
もし、エアロビック筋が鍛えられていなければ、短い間しかもたないアネロビック筋を使わなければならないことになります。
このアネロビック筋は脂肪ではなく、エネルギ−源として糖質(血糖)を主に使います。
また、これらの筋線維は数の上でエアロビック筋より少ないだけでなく、毛細血管があまりないため、毛細血管のあるエアロビック筋に依存している部分が大きいです。
負荷が大きくなるアネロビック運動は『No pain No gain』(痛みがなければ得るものがない)タイプの運動で、非常に腰痛、股関節痛、膝の痛み、足首の痛みなどスポーツ障害が起きやすい状態を作ります。
身体だけでなく、精神にも効果が現れる
ところで強力なエアロビックシステムがつくられると、精神的にもバランスのとれた状態になります。
なぜならエアロビックベースができ上がると、身体は十分に蓄積されている脂肪をエネルギ−として使うことができるので、血糖を脳のエネルギーとしてセーブできるため、血糖値が安定する様になるからです。
脳や神経系の働きは、血糖に非常に多くを依存しているので、安定した血糖値のおかげで気持ちのムラがなくなったり、一日で能力の落ちるときもなくなります。
また、食後に眠くなったり、甘いものが欲しくなるという現象も起きなくなります。
そして、自分が健康で非常によく鍛えてあると感じられ、精神的にも自信が持てるようになります。
エアロビックシステムを作るには
簡単にいうと、すべてのトレ−ニングをアネロビック(無酸素系)では全く行わず、エアロビック(有酸素系)の運動だけする期間を設けることです。
これには最低2カ月から最高10カ月間、多くの場合には3、4カ月間が必要です。
もし、この期間にアネロビック運動を定期的に入れると、しっかりとしたエアロビックベ−スを作るのが難しくなります。
さて、これらのことを頭において、いざエアロビックトレーニングを実践しようと思っても、どうすればよいかわからない方も多いでしょう。
そこで指針にすべき数値が心拍数です。
ここではエアロビックトレーニングを行うときの基準となる『180公式』を紹介します。(下表参照)。
ハートレートモニターを使おう
心拍数はハ−トレ−トモニタ−を使って計測しましょう。
この公式から得られた数値は、あなたの最大エアロビック心拍数を意味しています。
言い換えれば、エアロビックトレ−ニングするときには、この心拍数を越えてはいけません。
先の、エアロビックシステムの構築期間(2〜10カ月)とあわせて特に注意したいことです。
始め、このトレーニングを始めると、あなたはトレ−ニングが余りにもゆっくり過ぎると感じるかもしれません。
しかし、エアロビックシステムが築かれるにつれ、同じ心拍数でも速く走れるようになっていくでしょう。
これはエアロビックスピ−ドと呼びます。
あなたもエアロビックシステムをできてくると、徐々に記録が伸びていくようになります。
私たちは、運動のエネルギ−源としてもっと脂肪を使うことができるようになります。
そうすればより多くの糖質が脳や神経系のために使えることなり、レ−スの最後でもスパ−トをかけることが可能になります。
このようにエアロビックシステムが出来ると、よりフィットした選手になることができます。
さらには、余計な脂肪が燃え、免疫機構も高まり、よりエネルギ−が増えます。
そしてスポーツ障害と無縁になり、健康的になることができるのです。
ご参考にしてください。
鳥取県米子に1973年に創業した、国際基準カイロプラクティックを行う「中塚カイロプラクティック」院長。慶応義塾大学にて社会心理学を学び、後に米国ナショナル・カイロプラクティック大学大学院(現NUHS)に留学しDoctor of Chiropracticとなる。国際スポーツカイロプラクティックドクターのディプロマも取得し、アスリートのパフォーマンス向上のための技術や知識を豊富に有しています。
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会元会長、
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