水はアスリートにとって第4番目の栄養素であり、最も多くの人が欠乏させている要素です。
身体の水分が不足すると正常な水の循環を維持することができず、特に長時間トレーニングをした時に脱水症状に陥りやすくなります。
アスリートにとって水を補給するということは、他のいかなる栄養学的物質を補給することよりも大切といえます。
一般的に、若い男性の場合だと全体重の約60%、若い女性の場合は50%弱が水分といわれていますが、その3分の2は身体の細胞間にあり、特に筋肉に多く見られます。
これらを、一度脱水症状で失ってしまうと、それを補うために48時間を要することになります。
また、脱水が進めば血液の量が減少し、それにしたがって筋肉や臓器への血流が減少します。
すると血液で運搬されていた栄養素や酸素も減ることとなり、そのために心拍数が上昇するようになります。
MAFテストをして、行き詰まりに直面したり、記録が悪化したりする場合の多くは、脱水症状に見舞われており、心拍数が上がりやすいのでペースを下げなければならないというケースが考えられます。
つまり心肺機能は、脱水症状によって低下してしまうといえるのです。
このようにアスリートなら、水分を常に補給しておくことが、運動時のリスクを避けるうえでいかに重要であるかということを、よく理解してお行く必要があります。
脱水はパフォーマンスを左右する
ところで、持久系のランナーにとっては、脱水症状によって失われる水分量が体重の1%ずつ増えるごとに、2%ペースダウンするというデータがあります。
たとえば通常なら10kmを35分で走れるランナーが、体重の4%の水を脱水症状で欠乏させているとすると、38分(8%のペースダウン)かかってしまう計算となります。
これは無視できないパフォーマンスダウンです。
さらにはアイアンマンのような長時間のレースの場合には、数時間のタイムロスが生まれることもあるのです。
運動が長時間にわたると、1時間に1リットルから2リットルもの水分を失うこともあります。
ただ、さまざまなスポーツの研究結果をみてみると、運動中、1時間に1リットルの水分を補給することは可能です。
それゆえ、長距離のトレーニングやレースでは、少量ずつではあっても、1時間で失う水量を摂取するように心掛けたいものです。
また、エアロビック能力の高いアスリートの場合、水分調整を効果的に行えるので、体温を維持するために汗をかく割合が少なくなります。
つまり脱水症状に陥りにくくなり、このこともエアロビックベースを築き上げる重要なアドバンテージのひとつだといえるのです。
日常からマメに水をとる習慣を
この脱水症状から逃れるためには、とにかく少しずつでいいので、毎日マメに水を摂取し続けることです。
目標のレースを目前にして、慌てて水を飲むのでは手遅れです。
多くの水分を急激に摂取しても、喉の乾きはいやされるかもしれないが、体内では逆に利尿作用が生まれ、脱水症状を促進してしまうこともあるです。
1回の摂取量の目安としては、1カップ(200cc)から2カップくらいでいいでしょう。
そして、1日の必要水分摂取量は最低で3リットルから4リットルを目標にしよう。
ただし、一日に数時間以上トレーニングするアスリートに関しては、それ以上補給しなければならないということは言うまでもありません。
また、自分に水分が足りているかどうかを定期的に自己評価することも重要です。
一般的に、身体全体の水分量が減少すると喉が乾くようになります。
しかし、これはたとえほんの少しの脱水症状であっても血液の分量が減少し、のどの渇きを引き起こすし、塩分を摂取したときにも同じ症状が起きるため、脱水の症状を的確に把握する指針とはなりにくいです。
そこで、体内の水分の過不足を評価する伝統的な方法として、尿の色を観察することをお勧めします。
これは誰でも簡単に判断でき、役に立つ手法です。
具体的には、非常に濃い黄色の尿の場合には脱水症状を示しており、透明に近い尿の場合には充分に水分がとれていること表していると考えればいいでしょう。
アスリートなら、毎日この尿の色を評価するようにし、それに応じて水分摂取量を増加させるようにすべきです。
身体に摂取する水分の内訳
60%……水分(飲み水)
30%……食べ物
10%……細胞の代謝によって体内で作られている。
身体から出る水分の内訳
約60%……腎臓から(尿など)
約30%……皮膚、肺から蒸発する合計
約5%……大腸から
約5%……汗
※ただし、トレーニングの時には汗として失う割合が極めて上昇し、全体の90%の水分の喪失は汗が締めることになります。
鳥取県米子に1973年に創業した、国際基準カイロプラクティックを行う「中塚カイロプラクティック」院長。慶応義塾大学にて社会心理学を学び、後に米国ナショナル・カイロプラクティック大学大学院(現NUHS)に留学しDoctor of Chiropracticとなる。国際スポーツカイロプラクティックドクターのディプロマも取得し、アスリートのパフォーマンス向上のための技術や知識を豊富に有しています。
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会元会長、
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