私が患者さんから聞きたいと思う情報の一つに睡眠について情報があります。
多くの患者さんは『平均何時間ぐらい寝ておられますか』と聞くと『6時間』あるいは『5時間』と平気で答える方もあります。
逆に『8時間』と答える方は、なんだか恥ずかしそうに言われる方もあるほどです。
少なくとも来院される方の平均は5−6時間と言っていいでしょう。
睡眠時間を取らなくとも死にはしないのだから、無駄な時間として過ごす必要はないとばかりに、効率のみを追求する現代社会の罠にはまっておられる方が多くあります。
睡眠は私達の健康にとってはなくてはならないものであるということを忘れてはいけません。
ではこの睡眠時間は充分なのでしょうか?
良くこの様に聞いてみます。
『学生の時から寝ることはきらいでしたか』そうすると多くの方は、『いや、時間があれば寝ていました。なかなか起きることができませんでした。』
多くの方は眠るのがきらいではないけれど、段々社会人になってすることが増えてきて寝る時間が減っているというのが本音のようです。
『では、何時間ぐらい寝たらいいのですか』と必ず皆さんが聞かれます。
これに答えとなる時間は一つではありません。
通常、成人は7−8時間は睡眠時間を必要としていると多くの調査研究では提言しています。
しかし、これとても絶対というわけではありません。
たとえば若い頃、運動会やマラソン大会などがあったときには、どれ位睡眠を取られたでしょうか?
10時間の人も12時間の人もあったかもしれません。
つまり、疲れることやストレスが多い時に体は回復するのにより時間が必要になるのです。
そういう時に多くの時間の睡眠が必要になります。
しかし、成人した後は逆のパターンを取ることが多くあります。
仕事が忙しいから、睡眠時間を削って頑張るというような状況です。
本来は普通よりも多くの時間を休息に当てたいと体が思っているのに、その逆をするわけです。これでは体が悲鳴を上げるのは時間の問題といえるでしょう。
長く寝ると辛くなるのは?
時々『先生、自分は睡眠時間を増やすと余計辛くなるんです。
だから睡眠時間を増やせないんです』という方がいます。
これはどういう理由でしょうか。
睡眠不足になっている方々の背中は例外なくきわめて緊張しています。
つまり、睡眠不足を続けていれば、体の様々な部分が緊張して血流も体液の流れも非常に悪くなっている状態が起こっています。
その様な時に寝ると一時的に特定の部位が圧迫されて、さらなる循環の不良を生むようになります。
通常であれば、この様な時に寝返りをするものですが、体の緊張の強い人は、動かすと痛かったりするために寝返りが少なく、余り動くことがありません。
そのことはさらなる循環の不良を生むようになります。
この様な状況になっている方はかなり重篤な状況にあります。
早く、体の緊張を取り除き、体液の循環を改善し、柔軟性のある体にしていけば、眠りすぎで余計に辛くなるような悲劇とはお別れできます。
危険な状態
非常に危険な方で、自分でそれが分からないケースについてお話ししておきましょう。
『自分は非常に短い時間しか眠らなくても大丈夫。質の高い眠りが出来ているから、痛みも問題もない』といわれる方です。
自分の経験だけを持ってして、今まで問題がないから、これからも問題なしというのはきわめて楽天的な考え方です。
体は本来、眠い時には眠い、元気な時には元気と教えてくれるようになっています。
しかしそういった感覚を無視し続けると、体は本来の感覚を失うようになります。
つまり寝ないでいると眠いという感覚が鈍感になっていきます。
ですから睡眠がたりなくとも眠くなくなってくるのです。
メーター類の壊れた状態で車を走らせていると、調子がいいのか悪いのか分かりません。
突然動かなくなるまでなんの信号も出してくれないこともあるのです。
今まだ症状が出ていないから、自分は寝なくても大丈夫は通用しないのです。
『ナポレオンは3時間しか睡眠を取らなかった』とまことしやかに伝えられていますが、その替わり馬の上でも寝ていたというのも有名な話しです。
寝たいのに眠れない
寝たいのに眠れないで困っているという方も多くあります。
多くの場合2つのタイプに別れます。
一つは睡眠に落ち入れないタイプ、もう一つは途中で目が覚めてなかなか睡眠に戻れないタイプです。
最初のタイプについてはいくつかの原因が考えられます。
まず一つは眠りにつけない原因を作っているケース。
布団の中でテレビを見たり、本を読んだり、携帯やパソコンでメールをしたりする場合です。
布団の中で寝るという条件反射を作らないようにしてしまうため、体が寝るタイミングを失ってしまいます。
色々なことをくよくよ思い返してしまう。
これは古典的な方法、『羊が一匹、羊が2匹…』と羊を数えると眠れるでしょう。
カルシウムの欠乏があってもリラックスが出来ないために眠れなくなることがあります。
途中で目が覚めてなかなか睡眠に戻れないケースはストレスが関連しています。
ビタミンB1が不足していたり、甘いものやアルコールの取りすぎでそうなることが良くあります。
ホルモンのアンバランスのせいで起こります。
ですから、なんとか眠ろうとナイトキャップ代わりにアルコールは逆効果になります。
気をつけたいこと
しっかり眠っているのにいつも眠い。会議中に必ず寝てしまう。
車を運転すると眠くなって危険で長い間運転できない。
睡眠中にいびきや無呼吸を指摘されたことがある。
以上のような方は睡眠時の呼吸の問題の可能性がありますので、専門の病院を受診されることをお薦めします。
心地よい睡眠のための鍵
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カイロプラクティックでリラックスの出来る体にしておく
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寝具は使い慣れたものを使う(低めの枕、固めの敷き布団がよい)
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条件反射的に寝るための自分の儀式をつくる(歯磨き、トイレ、寝るといったようにいつも同じ方法で寝るようにする)
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寝床の中で寝る以外のことを避ける(読書、TV、携帯など)
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食事は寝る前に3時間前までにすませておく。
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手足が寝る前に温かくなるように心がける
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布団の上で寝る(うたた寝は疲れが取れません)
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ゆったりとしたパジャマを使う。
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音が気になる場合には100円ショップで耳栓を購入する
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明るさが気になる場合には100円ショップで安眠マスクを購入する

鳥取県米子に1973年に創業した、国際基準カイロプラクティックを行う「中塚カイロプラクティック」院長。慶応義塾大学にて社会心理学を学び、後に米国ナショナル・カイロプラクティック大学大学院(現NUHS)に留学しDoctor of Chiropracticとなる。国際スポーツカイロプラクティックドクターのディプロマも取得し、アスリートのパフォーマンス向上のための技術や知識を豊富に有しています。
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会元会長、
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